不動産ファンドの国際化

ルビコンガリレオ。イタリア史関係の書物には必ず出てくる固有名詞である。前者はシーザー(カエサル)が大英断を下して渡った川の名前であり、後者はシーザー以上に有名な物理学者・天文学者である。しかし今日取り上げるルビコンガリレオにはどちらもその後に「・ジャパン・トラスト」が付く。ルビコン・ジャパン・トラストとガリレオ・ジャパン・トラスト、これはどちらもオーストラリアの不動産投資信託(オーストラリアではREITと呼ばず、LPT(=Listed Property Trusts) と呼ぶ)である。この2つのファンドには名前以上に共通の特徴がある。それはどちらも日本の不動産だけを組み込んだファンドであるということだ。

現在、日本のREITでは国内の不動産のみをその投資対象とすることとされており、海外不動産については俎上に乗ってはいるもののその制限は外れていない。その一方でオーストラリアでは日本の不動産に特化して銘柄が既に3つも上場を果たしている。3つと書いたのは、昨年10月に上場したルビコン・ジャパン・トラスト、同12月に上場したガリレオ・ジャパン・トラストに先んずること1年以上前(2005年4月)にバブコック・アンド・ブラウン・ジャパン・プロパティー・トラストという舌を噛みそうなファンドが上場しているからだ。

オーストラリアのLPTの歴史は意外に古く、既に1971年にはそのための法制定がなされていたらしい。この点では日本より30年進んでいたことになる。歴史がそれだけ違えば、当然上場銘柄数や市場規模(時価総額換算で約2.5倍)も日本より大きい。そして配当利回りは日本のものよりも平均的にずっと高く8%を超える銘柄もある。為替リスクはあるもののこれは大きな魅力であろう。

それを見越してのことか、三菱UFJ投信ではオーストラリア・リート・オープン(毎月決算型)という投資信託を扱っており、最新版の運用報告書を読むと純資産総額が128億5300万円とされている。ちなみに件のバブコック・アンド・ブラウン・ジャパン・プロパティー・トラストもしっかり組み入れられており、その比率を見ると0.9%である。(他2銘柄は時期的な関係で困難、今後に期待。)

オーストラリアで日本特化型の不動産ファンドが作られ、その一方日本ではオーストラリアの不動産ファンドに特化した投資信託がつくられ、それには日本特化型の不動産ファンドが組み入れられ…、と一読しただけでは何が何やらよくわからない話だが、これは現実の世界で起きていることである。オーストラリアに限らず、諸外国でも日本特化型不動産投資信託を組成しようとすれば、当然のことながら日本の不動産を取得せざるを得ないし、それが日本のREITとの物件獲得競争を激化させ、結果としてさらなる地価の上昇を生む。彼らには日本銀行の総量規制的手法は意味をなさない。国際化の荒波にJ−REITがさらされるのも時間の問題ではないだろうか。上記3ファンドが東証にも上場する日が来るかもしれない。

人気blogランキング